
ジョーティッシュでいくつか定義される星座上の危険な度数に
水の星座(蟹座・蠍座・魚座)で所定された「サルパ・ドレッカナ」がある
即ち
蟹座の10~20度 / 20度~30度
蠍座の0度~10度 / 10度~20度
魚座の10度~20度 / 20度~30度
(情報引用元
危険と言うのは端的に良いか悪いかの大別的表現であって
上記のゾーンに月や木星やケートゥが住んでラージャ・ヨーガになっていれば
むしろきわめて細微な無意識下の第6感が開花し感応力の霊性が育つことになる
ただしもちろん水の星座のいずれかが凶意のハウスに当たってしまい
月齢の弱い月が孤立していたりすると負の感情が惹起されやすくもなり
倫理観と距離を置いたアウトローを生み出すことは当然の事実である
例えば私自身ラーシの土星が逆行して蠍座の11度21分に住んでおり
ナヴァムシャの精密な度数が出せる有料ソフトでケートゥはその土星とほぼ同位置に住む
(つまりナヴァムシャのケートゥは高揚状態でありしかもそれは「争い」の6室に当たる)
信用するか否かは読者各位に委ねるが私は歴とした会社経営者である
火星や土星が機能的にも凶意を持っており不穏な人間であること自体は確かに自覚があるが
30年以上の人生で私が加害する側として犯罪に関与したことなど一度としてない
会社経営で関わった相手の中には常軌を逸した人物と何度か対峙しているが
私の場合はそうした敵対者がラーフ的でありつつも
サルパ・ドレッカナの具現した経験だったようである
なおラーフもサルパ・ドレッカナもその表象は近似しており「姦計を帯びた蛇」で示される
そうした賢さや巧みさが悪く出れば妄執を募らせ素早く密かに人を罠にはめる痴れ者になり
聖なる異能として顕現すれば超常的感受の無我を誇る霊的な達人となる
私は8室のラーフが俗悪な劣情を振るう18年間をやっと卒業できたばかりなので
臨死体験でもしない限り霊性の実践者などには到底なれないことだろう
今回は私とは違う方向へカルマの荷を背負い生きてきた女性のチャートを紹介したい

3室4室支配で逆行した機能的凶星の土星を今生のラグナに受けた彼女は
更にその両隣が凶星で挟まれた余りに過酷な配置(パーパ・カルタリ・ヨーガ)であり
「普通」や「健全」といった言葉で指示される現実的な経験の積み重ねを早くに放棄させられた
生まれてから4歳を過ぎるまでは月がその土星と対向した息詰まる責め苦の時期であった
3室とは8室から8室目でその本質(寿命・健康)である
ご本人曰く「生まれてから何かしら病気をやりながら大人になって行った」とのことで
吉意の働きがなく逆行して成長力に向かわない土星が本人そのものを指すラグナで露悪し
3室の象意(忍耐)と生来的凶意の両方を幼い心身に容赦なく浴びせかけている
3室というのは「言葉と身体を使った自己表現」だが
あらゆる場面で手を使って文字を書いたり物に触れたりする正しい「挙動」の象意が阻害され
その結果彼女の手足は皮膚がひび割れ裂けてしまうような疾病を負ったらしく
幼くして両手や足の裏を包帯にまかれたまま過ごさなければならなかった
土星がラグナから山羊座へアスペクトバックしていても機能的に凶星で逆行しているためか
3室の象意が無益な悪影響のみで本人の成長を阻むばかりのように見える
しかしその土星は蠍座でサルパ・ドレッカナの影響力を発現し
逆行することでケートゥの住む12室天秤座にも絡み
そこへラージャ・ヨーガとなった吉意の恵み豊かな木星がアスペクトしてくる
この隠れて働く奇跡の守護が彼女に超物質的な第6感の共鳴力を授けたらしい
彼女はそうした病苦に耐える身体でありながら
日常の光景に「人の姿をした人ではない何か」をボンヤリと認めるようになったのである
(本人曰く「走り去る車の背面に半透明の人?がしがみついているのを確かに視た」とか)
訊けば彼女の祖母はより自覚的に透視や霊視の能力を正しく使役できる「異能者」だった

7室で土星と対向する月は「父・祖父母」の9室を支配する女性惑星で祖母を意味するようだ
サルパ・ドレッカナの影響力が如何にして働くかは計り知れないが
この彼女は土星が蠍座でヴァルゴッタマであり高揚並みに重く厳しく抑圧を帯びる
祖母の「理解ある」擁護と導きで彼女はそれが普通ではないと知りつつも
段々とその陰の側面と対話を重ね
ついには瞑想のために設けたハナレのようなアパートで異様な神秘体験を遂げた
霊感を研ぎ澄ますために断食を続けていた最中
アパートの壁面がスクリーンのようになり全く知らない異世界の光景が立ち現れたという
川のほとりと思われる場所で眠りから醒めるとその映像は彼女の視界から見た世界となり
金の飾り物で自分の身体が宝飾されているのに気がついた
岩盤で白く舗装された階段が続く緩い山道の坂を登り切ると
頭を剃り上げて腰巻だけを纏った半裸で浅黒い肌の男たちが彼女を出迎えた
神輿のような担ぎ台に乗せられて更に山を奥へ奥へと進んでいき
道の向こうが見渡せるようになると
こちらへと同じように神輿台に乗った少年が脇に剣を携えて迫って来る
限界までお互いに近寄り神輿の担ぎ手が足を止めたかと思うや否や
「ごめんね ごめんね」と相手の少年が涙で悲しく顔を歪めて剣を抜き
彼女の首を力いっぱい断ち切った
首を刎ねられ頭が吹っ飛んでしまってから数十秒ほどはその後の光景が途切れず続いていた
彼女はその首を絶った相手と兄弟であることが何故か分かり彼女はその彼の弟だったそうだ
体感にして数分程度のその幻視は彼女の眼が光を放つ映写機のように働き描き出されていた
彼女はその首元に生まれつき痣を持っていることからそれが自らの過去生だと気づいた

過去生の縮図であるシャスティアムシャでは2室や12室の配置が有意な所見を持っている
2室で定座する火星はそれ自体に刃物の象意があり刃物による絶命(マラカ)の可能性を醸し
コンジャンクションしたラーフには「突然の暴力」といった意味がある
2室とは医療占星術の身体部位の定義で喉から上の部分を指し即ち首元に当たる箇所である
対向8室にケートゥが住む配置だが
やはりケートゥも「刃物」の象意を持ち即ち武器で襲われることを意味する
(また古典の定義によっては3室に「首・喉」の象意を当てる口伝もあり
その場合に3室を支配する金星は「暴力・傷病」の6室に住み
4室から12室支配でマラカとなった土星がアスペクトし
12室からは金星のディスポジターの太陽がアスペクトバックする)
ラグナロードの木星は「束縛」や「拉致」といった経験を指す12室に住んで
コンジャンクションする太陽は公の秩序の表示体で「暴力」の6室を支配している
従って彼女はかつての過去生において時の為政者の聖断により人柱にさせられたのである
魚座ラグナで執拗な悪意を秘めた人物を指す金星が「苦役」の6室に住む所見も同一の意趣だ
「選ばれること」の11室と「失うこと(死)」の12室を支配する凶星の土星が4室に住む配置も
何かの因果で< 忌み子 >に選ばれなくてはならなかった非業の定めを指すのかも知れない
4室は拡大解釈で宗教儀礼のための「会堂」であるアシュラムという集い場を意味する
このように
余りに鮮烈すぎる不思議な奇談に絶句させられ私はジョーティッシュの因業さを実感した
それだけではない

彼女は太陽がラーシで魚座29度40分に位置しナヴァムシャでヴァルゴッタマである
つまりこの太陽もまた彼女の異能を色濃く映すカルマの集約となって働くようだ
彼女は話を伺う限りクリスチャンらしく
聖書の説話に関してその寓意の解釈を書きしたためるといった日課を持っている

「学問・習熟」の5室は8室支配の水星が減衰しパラーシャラの例外則になり
両隣を吉星に挟まれたシューバ・カルタリで更に吉意に守り固められている
(また宗教を生活の一部とするのはその表示体の木星がラージャ・ヨーガだからだろう)
彼女の異能は5室的な内的沈潜において発揮されるようで
聖書の寓話を読んでいると強い幻視として共感覚がありありと沸き起こり
叙述の中で描かれた風景とその場の体感を生理的に知覚することすらあるという
そうした深遠な心的念慮の才能は素朴な日常で支障なく時を重ねることの代償だ
彼女に限らず物質性を遥かに飛び越えた超精神の自我に生きなければならない方は
決まって日常生活に相当なハンディキャップを抱えたままである場合が多い
彼女も例外ではなく「食欲」の2室から2室目の3室を劣悪な土星が支配するため
成人して数年の頃には食生活に強迫観念のような忌避感が強まり
今では完全なヴィーガンになってしまったそうだ
ラグナで凶星が吉意を持たない配置はやはり生涯をかけて人間的成熟に専心する所見だ
彼女もまた私同様あてどない自分探しを自己流に続けていくしかないようだ
一方で木星は「インターネット・SNS」の水瓶座に住んで12室のケートゥにアスペクトし
そこへ3室支配の土星が逆行してくる配置で
そのうちに彼女が私のようにネット上で自身の発信基地を持つようになる可能性を
密かに期待している
同じ木星期を進む者として彼女にいつしか豊麗なる報いが実ることを祈念します
以上
Comments