The Weeknd氏のラグナ検証
更新日:2022年3月21日

今回もまたビッグネームのチャート可視化に挑戦してみたい
私よりも若い読者の方ならこちらの男性が誰かはやはり説明不要なほどだろう
全世界を魅了しリリースから2年を経た現在でも
まだまだキラ―チューンであり続ける〖Blinding Lights〗
私は愚直に自分の見込んだジャンルに固執し食わず嫌いをよくやってしまうので
彼のことを知ったのも上記のタイトルが世界に普及しきった昨年の早春頃だった
異常に滑らかで純正な清涼剤のような美声
しかしPVで見る彼はアフリカ系の若者特有の無邪気でやんちゃそうな笑顔だったりする
(なお彼は生粋のエチオピア人の両親から生まれたカナダ移民である)

(元交際相手ベラ・ハディット氏との2ショット/本人のインスタグラムより抜粋)
その生い立ちを伺うだけでも
わかりやすく20代で夢を掴んだビリオネアな欧米的成功者の典型である

( 情報引用元 : ザ・ウィークエンド - Wikipedia )
ザ・ウィークエンドは自身の青年時代を、映画『KIDS/キッズ』の物語からHIVの要素を除いたものだと表現している。この映画は10代の若者がセックスや薬物乱用に堕ちていくというもので、ザ・ウィークエンド自身も11歳で大麻を吸い始め、その後より強力な薬物を摂取するようになった。様々な薬物に手を出すため万引きも頻繁にしており、ザ・ウィークエンドはこのときの状況を「何でもあり」だったと語っている
とにかく日本の社会では生まれ得ない来歴を持っており
スターとなった今でこそ言えることだが本当に劇的な人生である
そ の 出 自 に つ い て

(画像引用元 :ザ・ウィークエンドの生い立ちと経歴!家族や幼少時代・デビューまでを総まとめ | Celeby[セレビー]|海外エンタメ情報まとめサイト (celeby-media.net) )
【The Weeknd】ことエイベル・マッコネン・テスファイは
1990年2月16日にカナダ・オンタリオ州トロント東部のスカーバローに生まれた
エチオピアからの移民で社会的に高くない階層に属した家庭において
両親は所謂ワーキングプアに等しい生活を積み重ねていた
エイベルは母方の祖母(完全なエチオピア人)に育てられ
幼少期はエチオピア母語のアムハラ語しか話せなかったそうである
英語が話せなかった身の上も手伝ってか貧困な低位階層のアフリカ系移民だった彼は
例外なくストリートのコアな箱庭文化の洗礼を受けて上述したような変貌を遂げた
その後17歳で高校を自主退学し
親友と共に週末の深夜に突如マットレス1枚だけを片手に車で家出を果たし独り立ちする
この決意表明のエピソードに因んで彼はその名を【Weeknd】と名乗ったのである
(「Weeknd」という綴りがわざと脱字表記なのは同名のアーティストが既に在ったためだ)
その後
彼のミュージシャンとしての足掛かりは21歳間近の2010年12月に
地元カナダのトロントで知己を得たジェレミー・ローズなる先輩ミュージシャンに擁されて
3つの楽曲をインターネットにUPしたところから始まる
その内の1曲がこの「The Morning」である
Weeknd氏の独力作製ではない楽曲であっても持前の歌声と清新なメロディが見事に融和し
夜明けの優しい幻惑をラグジュアリーに溢れた絹のように端麗な声で底深くから紡いでいる
この透き通った神秘感を高い音楽性と見なしたリスナーが次々とネット上で話題に掲げ
とうとう北米における有力プレイヤーの一角だったラッパーのドレイクの耳目へ通じた

ドレイクのお墨付きを得てからは着実にその名が高みへと登り始め
2012年にはアメリカに本拠を置くリパブリックレコードの傘下において
独自レーベルの「XO」なるチームを結成し華々しいプロデビューを実現した
その後の彼の栄達の目覚ましさは冒頭に紹介した例の楽曲から推して知るべしだ
メジャーデビューから10年足らずで洋楽がサブジャンルでしかない日本でもその名は轟いた
以下に自己流でレクティファイしたWeeknd氏のチャートを示す

彼ほどの成功者となると初心者的な想像では10室や11室に惑星集中する配置を考えてしまう
しかし彼の場合はやはり単純にミュージシャンとして3室に金星が絡む強烈な所見が特徴だ
ラーシでは音楽の表示体である金星がそのままラグナロードとなり
ナヴァムシャでも金星は5室支配で音楽の象意が重複した双子座ラグナでヴァルゴッタマだ
ラーシの2室(声)は両隣を月と金星が挟んでシューバ・カルタリ・ヨーガを組み
支配星の火星は2室から2室目でその本質となる3室(歌唱・ダンス・芸能)に置かれて
希少なラージャ・ヨーガ・カーラカの土星からも援護を受け
それら二大凶星の威力に全く負けない優良なコンディションの金星が彼の個性の源泉になる
初歩的な努力を強いる凶意の3室に火星と土星が住むことで猛烈な二重否定が起きている
おそらくは頑なな克己心で彼は寝食も忘れて努力していた時期があったのかも知れない
その惑星集中した射手座の強さを深く根付かせ揺るがない実力にさせているのが木星である
ラーシ・ナヴァムシャの両方で木星がアスペクトバックしたり定座でコンジャンクションし
それぞれ必ず複数のラージャヨーガを繰り出し射手座が恍惚不可避な甘美さで充満している
射手座は一つの極限に向かう飛翔や絶頂といった趣意を持つが
皮肉にも彼の歌声は彼が明け暮れていた大麻の多幸な快美そのものを体現していると言える
しかして背徳を煽る退廃感などとは無縁なほど彼の歌唱は伸びやかに澄んで清く
心の原風景を醸した耽美な酔夢をもたらし
聴けば起きたまま眠りへと迷い込んで行けるような神秘性で時間の外へ向かう超越感がある
ここだけの話であるが
私が鬱病を発症し人生で初めて抗鬱剤を経口摂取した時の「それ」によく似た体感だと言える
彼は現代における顔役でありつつ前時代に隆盛したSDRのライフスタイルを顕現できている
(SDR・・・「Sex / Drug / Rock 'n' Roll」のそれぞれの頭文字を取り端的にその流儀を示した語)
私の主観でしかなくとも彼はその生き様を漏らさず音楽へと昇華できている印象である
そのせいか彼のバックナンバーには非日常なポエジーを湛えた夜の寂莫感を持つ曲が多い
この楽曲もまた大きなヒットを記録したキラーチューンの一つである
この曲はどちらかというと白昼夢のようで虚脱感が残る
今のような寒く寂しい頃合いにはこの曲もよく似合っていると思う
貧 困 と 両 親 不 在 が 生 み 出 し た 心 の 不 和
上述したようにWeeknd氏は孤立無援なエチオピア人の子供としてカナダに生まれ
その所在なさからか11歳の幼さで大麻に手を出し犯罪行為を重ねる少年時代を過ごした
そのバイオグラフィーはラーシ・チャートにも潜在していなければならない

「生家の余裕ぶり」の象意を持った2室支配の火星は「忍耐」の3室で強く傷つけられている
土星はラージャ・ヨーガ・カーラカであってもヴァルゴッタマになり
生来的凶意が高揚並みになってしまうし
金星は今生の彼自身を現すが支配する8室の象意で火星の2室的ポテンシャルを損なわせ
逆に火星と土星の2大凶星に容赦なく心身の余裕を削がれている
家庭生活の素地が根深く否定され続け結局は本人自身がその暮らしに絶望する様子だ
彼の両親は効率の悪い低賃金労働のような働き方しかできない後進国出身の移民である
4室も同様であり
ラーフとコンジャンクションした9室12室支配の水星は
ディスポジターの土星が4室を失うハウスの3室でしつこいほどに傷つけられている
(火星は2室7室支配のマラカで機能的にも凶意しかないことになり土星を強く傷つける)
つまり4室ではほとんど12室の象意の方だけが強く影響するかのようで
「どうせ自分は普通の人間になんてなれない」と諦念を心根に焼き付ける水星である
9室支配星が4室に住むというただそれだけの配置に囚われていると
彼のように心的な不幸を単なる「うぬぼれ」であると浅薄に看過してしまうことだろう
そうした幼い頃に密かに憧れたユートピア的な理想が今の彼を作っているのかも知れない
(なお4室山羊座は彼の実母のラグナであり山羊座ラグナとしてチャートを読み直すと
機能的凶星になった木星が6室双子座から2室水瓶座にアスペクトしてしまい
実母にとっての夫でありWeeknd氏の実父を指す木星が家庭環境を損ねていたと読める)
木 星 期 後 半 で 露 悪 し て い っ た 退 廃 と 背 徳 の 日 々

マハーダシャーにおいて「木星-ケートゥ期」になった頃がちょうど彼の11歳の誕生日後で
既知のバイオグラフィーである薬物依存の第一歩に踏み出してしまった時期である
天秤座ラグナでは木星も3室6室支配の機能的凶星となる不運の惑星で
やはりアスペクトされたハウスやそこに住む星に木星的快楽を「後ろ向き」に与える
