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9室が強過ぎるとどうなるか

執筆者の写真: 鹿村文助鹿村文助

更新日:2022年3月14日



これまで私が占断してきた対象者のチャートを実例に様々な人生の運命模様を論じてきたが

中でもジョーティッシュ的な品評力が厳しく試されることになったパターンを紹介する





全く見目麗しいことに9室にカルマの濃縮果汁還元を生まれ持つ突飛な女子大生に出会った



彼女の日課といえば学業そっちのけでオカルト的研究に没頭することであり

ラグナロードの太陽は9室で高揚し

エゴや意欲を指示する「自分力」の水星や実際の社会運を担う金星が8室で特異な相を見せる



12室の象意を持った魚座で水星が減衰し逆に金星が高揚することでニーチャ・バンガとなり

具現になっていない形而上的な無心の感受を全身に浴びるかの如くである

(また水星はラグナと月の両方から見て凶意の部屋で減衰しパラーシャラの例外則にもなる)



豊潤で鮮やかな眠りの奥に住むが如く

夢想感の只中で一心に思いを紡いでいる生き様は

戦中戦後の日本社会で近現代的な真なる前衛の創意を実践した文化人の姿を思わせる



ジョーティッシュをたどたどしくなぞっている浅薄な識者だった自分は

霊性の滋味が泉のように横溢している光景をこの彼女に想像し一人勝手に色めきたっていた



「あぁ──げに甘露なる魂の弥栄をこそ思へど」ともののあはれを決め込んだまま

彼女との対話に思いを馳せていると

私は自分の未熟ぶりが露見し切って冷や水を浴びせられたような現実を知った




彼女は極度の対人恐怖症でありその原因は家庭内での両親の病的な不和だというのだ







月と対向した牡羊座には4つの惑星の集中が生じ

4つ以上の惑星集中となることが基本的な条件の「サンニヤシ・ヨーガ」が成立している



「出家を悲願する厭世感情のヨーガ」と言われ現実社会との間合いがとれない性格を作る

しかし彼女の場合は霊性の9室と改革的漸進の牡羊座であり

本人の複雑な幻惑と念慮の反復は気血を帯びたプリミティブな創意の内燃を保っている



彼女をそうした生き方にさせてしまうのが4室支配で9室に定座する火星であり

コンジャンクションして減衰する土星の影響だと言える



獅子座ラグナは火星がラージャ・ヨーガ・カーラカだが

「母親」の4室と「父親」の9室を同時に支配しているため

火星に複数の惑星が絡むと即ちそれは『家庭環境の恒常的な不穏』を意味する配置になる



火星は9室で定座しそれ自体は実父が厳格で緊張感のある人物であることを指すが

太陽・木星・土星のコンジャンクションでその人物像がかき乱されて

イチイチ矛盾した異様で落ち着きのない父親を作り出してしまう所見でもある



土星は機能的な凶意が減衰して何か良い影響がありそうだが理性や秩序の表示体でもあり

月から見たケンドラに位置したり火星が定座する等してニーチャ・バンガではあっても

地に足が着かないような気忙しいやかましさが実父の言動に出てくるはずである



また惑星集中に参加している木星は8室の支配星として土星とコンジャンクションするので

9室で「6室対8室の絡み」が出来てしまっている




その悪意の相乗効果に苦しむのはチャート本人以上に彼女の実母である






彼女の母を指す4室をラグナと見なした仮想チャートでは

その混迷感が如実に可視化された配置となってしまっている



ラグナロードの火星は「争い・障害」の6室で定座し

機能的凶星の土星や4室とは相性が最も悪い太陽がわざわざ高揚できる星座に住んでいる

「家計の余裕」を担う2室支配の木星も「実子」の5室を支配して6室に位置してしまっている



特に悲惨な所見として

土星が大まかな「家そのもの」といった象意の4室を支配して減衰し太陽に傷つけられている



家の中での過ごし方がどんな時でも6室的な状況であることを意味し

母親の9室を支配して二重に精神性を指す月は6室と対向の「喪失・幻滅」の12室で孤立する



そもそも月とはチャート本人にとっての母親を意味するので

「努力・訓練」の3室で対向から惑星集中で清濁混合の異常なアスペクトを浴びせられて

実母が混乱ど真ん中なステータス不全に侵されているのは精査すれば分かることだ



またその月自体チャート本人のメンタルそのものなのだから

対人関係(7室)がのべつ幕無しに目まぐるしく

学校では「自分の友達が不良とも親しい」ような

白黒つけられない困惑感で苦しまなければならない配置でもある



何より惑星集中が起きている9室は10室(社会生活)を失うハウスである



そんな彼女は家の外の人間関係に疲れ切っているせいか

私が師事するプロ鑑定士の地元から近距離圏に住む彼女に同鑑定士への相談依頼を促したが

「今はお金もありませんし人と会って話すのが怖いです」と酷くか弱い返事しかなかった



現在の彼女のダシャーは来年1月7日から「木星-金星-木星期」が控えており

理性の9室と煩悩の8室が反復するかなり危険な時運へと向かう途上にある

(殊に木星と金星は互いに指向性の相反する強い吉星のため心身がチグハグになりやすい)



本来のラグナから見た8室魚座は月から見て「エゴ・直情」の6室になり

月は「肉体的な低次の行動欲求(食欲/性欲/睡眠欲)」の3室在住でもあり

彼女が人としてどこかで間違った関わりを持たないか私は個人的にもかなり心配である

(過去記事で何度も言及しているが現在は来春まで続く天秤座へのダブル・トランジットだ)



人間関係さえ誤らなければ8室対9室の絡みは「良いグルの厚意を受け自己研鑽する」配置だ

人と会うのが怖いというほどの彼女であるから過ぎた懸念は余計なのかも知れない



私も会社経営という立場から脱せられるのならまさに彼女のような人を助けてみたい



巷ではまだまだ新型コロナの変異株が流行し今後の生活設計を見通せない状況が続く

こうした時ほど不遇に行き詰った弱者につけ込む悪意の輩が密かに策動している



ジョーティッシュは私にとってビジネスよりも人生を導き直す知恵であるべきだと感じる



彼女の平和を祈念してやまない

何卒どうかご無事であってほしい


以上

 
 
 

2 Comments


人間7
人間7
Jan 06, 2022

とっても良い9Hにしか見えないので幸運な人と占ってしまいます。8L9Hの木星が悪いんですかね、でも5Lだし。私なら初見はとても良い事言ってしまいます。

インド占星術の難しさから抜け出せないです。

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鹿村文助
鹿村文助
Jan 06, 2022
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コメントありがとうございます。


確かに私も初めて彼女のチャートを見た時は同じように思いました


インド占星術ではそれぞれのハウスをラグナとして別人のチャートと見なすことができますから

この彼女の場合は4室をラグナとしてそれを彼女の実母のチャートにした時に

非情にその実母が苦悩することになるという所見でした

母親の6室は獅子座をラグナとした時の9室であり9室をラグナにすると

今度は父親が人間的に普通ではない “要注意な” 人物であることがわかります


父親本人のラグナになる牡羊座では土星が減衰し逆に太陽が高揚してしまっています

おそらくこの父親である男性は土星の意味する自制心が弱く

逆に男性らしさを指す太陽が牡羊座から見た5室を支配しており

行動的で家庭生活を顧みない尊大さで家族を傷つけてしまう余地があります

(牡羊座から見た12室魚座で金星が高揚し水星は減衰するので

何か家族には秘密にしたまま「不適切な交友」を家の外に持っていそうです)


このように

惑星集中は別のハウスをラグナとした時にそのハウスの意味する人物が

違う方向に良い特徴や悪い特徴を隠している所見になります


一つのチャートから複数人のイメージを予想でき

それが本来のチャートの持ち主にとって有益か無益かを見込めるのは

やはりインド占星術の優れた多面的分析力の便利さだと言えます


この記事のようなパターンがあればいつかまた記事にしてみようと思います

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