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執筆者の写真鹿村文助

魂の影を背負う人生-過去生のしがらみと闘うチャート-

更新日:2022年12月19日



私が独習を重ねながら初めて自己流の占断を行った相手の女性という方が

今でもなかなかに数奇で特異な運命に生まれた方だった





ラーシでは7室8室9室に星が等しい数で連続し土星が10室でラージャ・ヨーガになる

ラグナから5室まで全く星が住まないため外的な人間関係で人生が形作られ成長する配置だ



ラーフとケートゥが良好な乙女座魚座軸でヴァルゴッタマであり

ラーシでは凶意のハウスに位置して木星がラーフにアスペクトし厚い吉意の保護が成立する

向かう所に敵がおらず順調でマイペースな人生が続いていくような所見でもある



しかし一方で9室で新月が生じ月の4室目にラーフが置かれてしまい精神性が傷ついている

月をラグナとした場合のラグナロードの水星も月の12室目に位置し

機能的凶星の木星とコンジャンクションする



なおもまた本来のラグナから見たラグナロードの位置はとても悪く

火星が金星の敵対星位に定座し機能的にも凶星となって金星をしっかり傷つけている



こともあろうにこのルチャカ・ヨーガの火星が10室の土星と相互アスペクトしてしまう

若い頃は人懐こく明るい性格だったろうに深く関わって来ようとする相手はみな俗悪である



また

8室の両隣に等しい数の星が住んで挟み込み特別な影響力を示す「バンダナ・ヨーガ」となる



大人になっていくまでに異様な束縛を体感させられる経験が多くなり

次第に未来への希望が薄れ失意と自壊のような感情に支配されやすくなる



結果その鬱屈した感情は冷徹な態度となって現れて10室の土星でその姿が体現される



彼女もまた自分の運命に苦しみ自分と闘わなくてはならない過酷なカルマの持ち主である



しかし本当に注目すべきは彼女の出生時のタイミングだと思われる







ラグナも月もナクシャトラはラーフが支配して月は新月でもあり正直やや不穏である

このコンディションに対して分割図を見渡してみたところ驚くべき有意な所見があった





シャスティアムシャのラグナにラーフが住んでいる




即ち彼女の出生から18歳頃までの人生は

過去生の名残に心が囚われている時間だったようだ



彼女は8室に水星と木星が住むため

自分の人生に埋没しかけて自失しそうな無力さに浸る度に

「私はどんな目的を持ってこの人生を選んだんだろう」とやはり考え込む傾向にある



その自らの運命を問う思いの根源は遠い過去生を示すD60のこの配置にある



彼女は9室で新月が起こるせいか巷で「スピリチュアル」と言われる分野に懐疑的だ

占断を経た私との対話でも「霊能者の類は出来れば頼りたくなかった」と語っていた



しかし彼女が一度だけ深層催眠による前世療法を行った時に

古代エジプトのような文明世界で自分が女帝らしき人物だった光景を幻視したという



その当時の様子は確かにシャスティアムシャに配置としてよく現れているのが分かる



10室で定座した木星が最高位のマハープルシャとなりそれは「政治宗教」を意味する魚座だ

なおかつラグナロードの水星が6室11室支配の火星と星座交換し「地位・栄誉」の11室に住む



5室12室支配の金星が8室に住んで「シャーマン的な感能力の霊性」があったことを示す

そして10室には木星が定座することで「悟り」の9室がシューバ・カルタリになっている



おそらくは沢山の眷属に囲まれて玉座に就きつつも

日々の執務に厳かな決意で取り組み

多くの場面で威光の誉れを知らしめていたかのようである



しかしその帝位がもたらす慇懃な訓戒の重たさは相当なものがあり

8室9室支配の土星が6室に住んでパーパ・カルタリ・ヨーガとなる配置でそれが表意される



6室に土星が住みラグナロードが6室支配の凶星と星座交換するのだから不敵でいかめしい



そのパーパ・カルタリを作る3室支配の太陽が「人格・品行」の5室で減衰している

大帝たる位格に相応しくわざと多くを語ろうとしない厳しい尊厳を帯びているのがわかる



おそらくはそうした王侯貴族だった魂の濃い影が彼女の今生に覆いかぶさったままのようだ

口が裂けても言えないが過去生の報いが彼女のラーシにはこれ見よがしに形成されている





よく見ると母親を意味する4室支配星が10室からアスペクトバックする



私がそこまで深入りしなかったので不明だが

彼女の実母は事業を営んでいたかも知れない



父親を指す9室支配の水星が自室から12室目でバンダナ・ヨーガになるため

何らかの理由で彼女は実父と幼少の頃から離れ離れにさせられていたとも思われる



彼女との対話からわかるのは彼女自身の生まれついた性格の繊細さと複雑さに加え

母親との猛烈な確執が長く続いて家庭環境は随分と荒れに荒れていたようである



別に彼女に対し実母がネグレクトしていたとかではないらしいが

彼女自身が学校に行きたがらず同級生との交友を素直に育めない妙な不器用さを抱え

イチイチ何でも嫌がる実の娘が見せる難しい性格に実母はかなり手を焼いていた様子だ



月をラグナとした場合に

火星がそのまま11室で定座となり「家族・両親の様子」を指す2室に住む土星を傷つける

しかも月から見ると土星は「物事の中断・困難」の8室を支配してアスペクトバックする



そうしたラーシでの位置関係が双子座をラグナとして起きているのはただの偶然だろうか

おそらくはシャスティアムシャが現世に伝えてくるカルマの影が再現されているようである



話を次第に伺っていくとやはり彼女は人生が消化不良になってしまう「自分不全」の人だった

何もかもが億劫に感じられて学業も社会人生活も長続きしなかったというのである



即ち彼女の月から見た2室と4室に住む土星やラーフの影響の方が有意で強かったと思われる





ナヴァムシャでもその傾向は引き続きよく現れていて興味深い



水瓶座ラグナで貴重なラージャ・ヨーガ・カーラカの金星が減衰しラーフが金星を傷つけ

その上また両隣を凶星が囲ってパーパ・カルタリを形成してしまっている



この配置だけを見ても

過去生が達した霊的な命題を今生で思い出せないよう魂自身が望んでいると思えてならない



しかし面白いのは

そのパーパ・カルタリを作る火星と太陽は実に良い働き方をする配置になっていることだ



水瓶座ラグナで職業や人生の傾向全般を担う火星が10室の本質となる7室に住んでいる

火星のディスポジターで減衰してしまっている太陽も9室でラージャ・ヨーガになっている



こうして彼女は自分に苦悩しながら今生での出会いを通じて異なる霊性を目指すのだろう

その強い志は6室対11室で形成される星座交換のガージャ・ケーサリ・ヨーガが示している





ダシャムシャにおいてはその努力と達成の前進力が如実に示されていて力強い



6室にケートゥが住んでガージャ・ケーサリ・ヨーガとグル・マンガラ・ヨーガが両立し

破竹の突破力を与えるチャンドラ・マンガラ・ヨーガも成立している

4室では水星が定座してスーリヤ・ブッダ・ヨーガになり貴人的な風格と知性の機微が光る



魚座ラグナで最も厄介な機能的凶星である金星はまた減衰し土星がトドメを刺している



ラグナロードが6室で月や火星とラージャ・ヨーガを組んでさえいて

彼女が本気で努力すれば敵になり得る相手は次々と不利になり降参していくことなる配置だ



このダシャムシャでは逆に過去生の良いカルマが生きて働いているとも思える



一方でこの英気万端なダシャムシャに対して実際の彼女の職業は意外なものだった





やはりこのチャートから見抜き切れなかったのは全く私の度量の限界であるが

彼女は結婚式場の職員として働いているとのことだった

(おそらく「母性」の象意がある蟹座で4室5室支配の土星がヨーガを帯びている配置が

女性的な品性のある格式において責任や技能を発揮するといった所見になっている)



ラーシ・チャート上では月から見た10室魚座(宗教・美的表現)にケートゥが住んでおり

月から12室目でラグナロードの水星が7室(結婚)支配の木星とコンジャンクションする



10室と12室が木星(宗教の表示体)で関わり合うため「結婚式」(を行う場所)なのである



ナヴァムシャでは

月から見ると機能的凶星の金星が10室で減衰しラーフとコンジャンクションしている



「結婚」の7室に「訓練」の3室と「職業」の10室を支配する火星が住んでいたり

社会人としての自分を意味する太陽が「高次な自意識」の9室で減衰する

(また月から見た配置でも太陽は9室を支配して「評価」の11室で減衰している)



月から見ると彼女は今生で滅私奉公のような下働きをすることとなり

多くの不遇な経験を経て辿り着いた境遇が

「他者の幸福に奉仕してそれを見送る」ことである



それは過去生で為政者だった自分が最後まで出来なかった行いであり

結婚という儀礼行為において形になった多くの人々の幸せで己の心を祓い清める当為がある



即ち過去生で自身が「与える側」だった立場から「与えられ守らせられる側」に逆転している



彼女にとっての一つの答えとなった今の生活はマハーダシャーで土星期の後半に当たり

ラーシでの強力な配置とナヴァムシャで12室に定座する配置からも

自分自身と対話しながらそのしがらみを解放する時に差し掛かっていると言える



そして今現在( 2021年12月 )は

来年4月初旬まで続く天秤座(ラグナ)へのダブル・トランジットの最中である



彼女の前途に喜びと成長が待つことを祈念いたします



以上

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