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執筆者の写真鹿村文助

優れた魂が抱える贅沢な不幸

更新日:2022年9月30日






基本的にジョーティッシュにたどり着く人というのは

かなり奇特な人生を進まなければならないような憂鬱な境遇に在るパターンが多い



つまり明らかに本人だけが人並みよりも異様な経験を重ねてばかりいて

「自分は不幸なんだろうか」と悩んだりすでに自分の人生を悲観し始めている人が少なくない



私自身もその一人であり

客観的には事業経営者の長男という立場で何一つ不自由がないとでも思われているだろうが

ジョーティッシュを通してそれが完全な間違いであることも証明できる



私如きの半生を見通してみてもこの10年超で日本は慢性的な「不自由病」が横行している



殊に現在は数年ごとに日本社会を桁外れの災害や疫病が襲っているせいか

ネット上の場末的界隈では修羅場じみた罵り合いが絶えず垂れ流しになっている



皆どこかで人生に行き詰ってしまい

奴隷根性のような被害者意識でわざわざ誰かと争いたがる間違った「やる気」に満ちていて

某大手ネットニュースのコメント欄ではいい年をした大人が話題の人物を常に攻撃している



そんな人々に比べればジョーティッシュにたどり着き自分を知ろうとするだけでも進歩的だ

ただしその目的意識の良し悪しは別問題だが──




以下に私が占断した対象者の中でも「上の方に向かって規格外」な方を紹介する






表題の通りこの女性は随分と吉意の強い配置を持って生まれているにもかかわらず

「転職ばかり繰り返していて仕事が続きません」といった相談内容を述べていた





ダシャムシャを診て一目瞭然だった

ラージャ・ヨーガ・カーラカの火星が12室に住んでしまっている

思っていた以上にD10が影響力のある分割図であることを知れた良い実例となった



相談者の方々は時に不幸である旨を主張するような立場であるが

実際にチャート作成してみると十分にご本人にも問題が見受けられるパターンはあるものだ





この女性はラグナで高揚するディグバラのラグナロードがマハープルシャとなり

コンジャンクションした土星も5室支配でラージャ・ヨーガを帯びて

その二つが5室対10室の絡みで猛烈に強いラージャ・ヨーガの組み合わせになっている



同じ乙女座ラグナの私が微塵も敵わないほどの乙女座的キャラクターが顕現している

事あるごとに極限まで合理主義を実践しどの場面でも「断捨離」をやっている印象である



問題はその土星が6室の象意も強く発散し3室7室10室に凶意のアスペクトを与えることだ

特に10室はラーフが住んでいて5室と6室の象意を同時に受けて吉凶の振れ幅が大きく開く

(ただし木星もアスペクトしてダブルトランジットとなり吉意の保護が若干は期待できる)



このラグナと10室のコンディションだけ見ても

本人が余りにも辣腕で恩情の薄すぎる人物である様子が容易に想像できる



職業というのは周囲との二人三脚であり自分の信用を守り育てなければ続かないのは当然だ

誠実に正しく仕事をすることで場合によっては「ギブ&テイク」を行う余裕を残すべきである



大人になればそれくらいのことは暗黙の了解となるはずだが

この女性はそれすらも理解できていない節がある



全く申し訳ないが要するに勉学と職能には恵まれているだろうに人間的に劣等なのである



彼女の7室には11室支配の月が女性の星座である魚座に住んでいる

12室で定座する太陽から8室目で満月に近いため生来的には女性らしい情緒のある性格だが

それをラグナロードと土星が否定するかのように働いている



つまり彼女は社会人としての自我の無意識な側面に妙な「自己嫌悪」を隠していると読める



占断対象が女性の場合は金星の状態と配置も重要だが

彼女は12室で定座する機能的にも凶星の太陽と金星がコンジャンクションし傷ついている

(おそらくは生家の実父がとても高慢で支配的に振舞っている可能性がある)



また

4室支配の木星が「家庭環境の余裕」という象意も持った2室に住んで火星に傷つけられており

母親(4室)が自己犠牲的に家庭内の揉め事を上手く受け流し円満さに努めている様子である



乙女座ラグナにとっては太陽と火星が機能的にも凶意を持つためその配置が死活問題である

この彼女は12室で太陽が定座し2室に火星が住むためラグナがかなり傷ついている



他方4室にはケートゥが住んで3室も両隣を凶星に挟まれてしまっている



ラグナと3室という若年期において人生を決定してしまいうるハウスが潜在的に不幸なため

彼女はその無二の青春を正しく自己実現できなかったようにも見受けられる



ラグナは主観的な自分らしさであり3室は実際の個性と努力や訓練の部屋である

これは私の実姉にも言えることだが月齢が満月に近いほど強くとも全体の配置が悪ければ

長い人生においては不自由と所在なさが伴って本人は「薄幸な物語」の主人公になってしまう



彼女の月は満月がやっと欠け始めただけでかなり強いがきついケマドルマ・ヨーガでもある



彼女は気がつくと自分自身が嫌いになりほとんど人生を持て余して生きてきたようである

その結果が10室の傷ついたラーフであり土星に傷つけられた11室支配の月である

大いに有能であるが実際的な努力ができず「何が好きか」より「何が嫌いか」で生きている





人生の本質たるナヴァムシャは幸い3室で金星が定座し水星とコンジャンクションしている

「能力」の5室を月が支配して10室に住む強力な配置で同様に火星もラージャ・ヨーガである

その2つの創発的な吉星が向かい合って良好なチャンドラ・マンガラ・ヨーガも組んでいる



5室はまたもパーパ・カルタリ・ヨーガだが

6室に住む土星は12室支配のためヴィーパリータ・ラージャ・ヨーガにもなっており

気合いを込めて精力的に働くことで厄介な相手(敵)が次第に降参してゆく良い配置である



ラグナロードの木星は減衰こそしているが「評価」の11室在住であり

マイペースな言動を許される境遇が実現しうる稀有な運の良さが現れてくる



そしてその木星が3室の良好な水星・金星にアスペクトしている

この木星には機能的に凶意がないため彼女はむしろ文化や芸術の方面で成功する傾向が強い

(私はこの特徴を占断後の助言として指摘したところ本人は

「そういえばコラムを書いたりするのが昔から得意でした」と他人事めいた受け答えをした)



彼女は現在のダシャーが金星期の終盤頃に来ておりそれだけでも3室的幸福感が実るはずだ

その後に巡る太陽期では太陽がナヴァムシャで7室に住んで木星からアスペクトされるので

太陽の機能的凶意やケートゥの悪影響が表面化しにくく体感的には程よい気楽さが望める





いずれ来る太陽期はラーシで12室に定座し結婚の表示体の金星とコンジャンクションする

結婚運そのものを示すナヴァムシャでも木星が太陽を保護する配置のため

既婚であれば私生活を意識し始めてそれまでの人生とは異なる経験が増えていくだろう

(ナヴァムシャは月から見た太陽が最も強いラージャ・ヨーガであり何かの転機がありうる)




しかし彼女の特殊さは魂の核心を示す分割図であるシャスティアムシャの破格の強さにある




ラグナロードの木星と6室11室支配の金星がマハープルシャ・ヨーガになっている




全くここまで強いシャスティアムシャは初めて見た

月をラグナにすると本来のラグナロードが10室で定座し最高位のマハープルシャにさえなる

なおかつその月はヴァルゴッタマとなりガージャ・ケーサリ・ヨーガも成立している



12室ではケートゥが高揚し対向から水星がアスペクトして「悟り」の根源的な深みを示す



命の内奥から英知をジワジワ滲ませる幽玄な「霊性」の体現と言うのだろうか

この私如きよりも多くの生を経てこの時代に出来してきたのかも知れない



表面的には不幸が絶えない人生だが

魂に秘められた遺伝子のような伏運は極大の強さを誇り

決して彼女の心と体は薄弱ではないのだと言える



惜しむらくは彼女のその数奇なカルマである



おそらく彼女の今生の目的としては

その英傑たる輝かしい魂を一旦は鎮め切って「心頭滅却」し

全く新しい経験を積もうと自らが望んでいるとも考えられる



そう



彼女は恐ろしいほど優れた悟りと矜持を備えた霊妙な魂の持ち主だったのである



これは私にとっても大きな学びだった

劣等に生まれてきた人間にはそれぞれ異なる理由とその魂の歴史があることが実感できた



これだからジョーティッシュは辞められない

私自身もこの劣等なままの生き様をいつか昇華(消化)できると信じられる証左になった



                                       以上

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